सर्वे सन्तु निरामया
サルヴェー サントゥ ニラーマヤーハ
一切万物が健康であれ
アーユルヴェーダとは、サンスクリット語で【アーユス】(生命 生気)【ヴェーダ】(真理 科学)の複合語で、「生命の科学」と訳されています。
約5000年の歴史があり予防医学と病や怪我の治療、また食べ物の特性について詳細に書かれています。
アーユルヴェーダについて書かれた書籍やサイトがありますが、原文の記述がサンスクリット語で日本語に直訳しにくいものもあり、イメージ豊かに読み解いていかないと理解しにくいかもしれません。理解しにくいもうひとつの理由として、手法(手段)の解説ばかりに目が行ってしまうことがあげられます。大切なのは定義や目的であり、これをしっかり捉えないととアーユルヴェーダの本質を理解できません。
前インド国立グジャラートアーユルヴェーダ大学.大学院学院長 ハリ・シャンカル・シャルマ先生がアーユルヴェーダの定義について次のようにあります。
「有益な人生、不益な人生、幸福な人生、不幸な人生、生命にとって何が有益で、 何が不益であるか、寿命の長さについて語る学問、それが生命の科学:アーユルヴェ ーダである。」
漠然としていますが、知れば知るほどこの定義に即した体系によって構成されているのが分かっていきます。
アーユルヴェーダはとても厳格な一面もあり、分かりやすく説明しようにも解釈の違いによって誤って捉えてしまうといけないので、基本的な用語と簡単な解説、ハチミツにかかわるところだけご紹介します。
ハチミツと人類の歴史は古く、約5000年前の壁画にも養蜂のシーンが描かれています。
古くはミツバチの自然巣から採取していたので、高い木の上や崖など、ハンティングさながらの危険な仕事でした。
ハチミツは古くから薬として使われ、その薬効成分に着目してハチミツの種類や効能を体系づけたものがあります。そのひとつがインド発祥のアーユルヴェーダです。
自然からの恵みには、わたしたちの健康に欠かせない栄養がたくさんあります。また、古くからハチミツはクスリとして使われてきました。
ヤケド、皮膚のただれ、外傷、目の治療などの塗り薬として。
疲労回復、肝臓、心臓、血液、咳止め、下痢、便秘、虫下し・・・などには服用として。
さらに、精神の安定や不老長寿、精力剤、肌を健やかに保つことからクレオパトラ7世は化粧品として使った記録もあるようです。
これらは、エジプトやインドなど文明の発達した地域を中心にミツバチの生息する処では、同じような効能が示された文献が数多く残っています。
民間治療ともとらえられがちなハチミツの効能ですが、20世紀頃から次々に科学的根拠が解明されてきました。
イギリスには古くから「The history of honey is the history of mankind」: 「ハチミツの歴史は人類の歴史」ということわざがあります。
古くからその効能を知って使われてきたハチミツは、知れば知るほど驚きの恵みなのです。
古来よりハチミツはクスリとして使われてきました。約5千年の歴史があるアーユルヴェーダ(インドの伝統医学・「生命の知識」の意)には、ハチミツの効能や処方についての詳しい記載があります。
アーユルヴェーダにおいて、ハチミツは「消化管・血管やいろいろな管を浄化し、純粋性・健康をもたらすもの」「純粋な知性のエッセンス・生命エネルギーを高め、活力ある健全な状態を生み出すもの」とされ、4つに分類して処方されています。
マドゥ=サンスクリット語でハチミツの意味
Ⅰ ナヴィン・マドウ(新鮮なハチミツの意)
滋養的で成長を助け、緩い下剤として働きます。
僅かながらヴァータ、カパの失調を抑えます。
病中・病後など滋養を高めるのに効果があるとされています。
ご高齢の方や食欲不振の方々にお奨めです。
Ⅱ プラーナ・マドウ(古いハチミツの意)
渋みがあり溶解性で、脂肪および肥満を減少します。
「ナイフで削るように脂肪をそぎ落とす」と言われるハチミツです。
健康的にダイエットをしたい方々にお奨めです。
Ⅲ パクワ・マドウ(熟したハチミツの意)
トリドーシャのバランスを整えます。
働き盛りの方の健康維持、病ではないけれど調子が思わしくないと感じる方々にお奨めです。
Ⅳ アーマ・マドウ(淡い未熟のハチミツの意)※1
トリ・ドーシャのバランスを乱す働きがあります。
●ラ・ターブルベールでは、上記のアーユルヴェーダの記述に基づき、ハチミツの採蜜方法を独自に研究し、分類ごとの採取を行っています。
※1=ラ・ターブルベールでは、Ⅳアーマ・マドゥの製産はしていません
アーユルヴェーダにおいて、この言葉はとても重要で基本となります。
宇宙は五大元素 「空」「風」「火」「水」「地」によって構成されると古代インドでは考えられてきました。
宇宙の中の地球、地球を構成する物質や植物・動物、そしてひとの身体もひとつの小宇宙であり、五大元素によって構成されると解釈されています。
アーユルヴェーダでは、3つの原理が身体の生理機能に働き、このバランスによって身体の状態を表しています。この3つの原理が「トリ・ドーシャ」です。
「トリ」とは【3】 ドーシャとは【生命エネルギー】の意味です。
madhu(マドウ)はサンスクリット語でハチミツの意味です。
※1=ラ・ターブルベールでは、Ⅳのアーマ・マドウの提供はありません。
ヴァータ | 【風】 【空】 | 流体のエネルギー |
ピッタ | 【火】 | 変換のエネルギー |
カ パ | 【土】 【水】 | 結合のエネルギー |
人は、それぞれ生まれ持った3つのドーシャのバランスがあります。
それぞれ等量の状態が理想系で、最もバランスが保たれている状態です。
また、ドーシャが大きく偏ることで病気を招くとされています。
ドーシャのバランスは四季によっても変化しますし、1日のうちでも小さな変化があります。
このドーシャの説明には、飯ごうで炊くご飯に例えられています。
火は「ピッタ」 ご飯の水は「カパ」 火を燃焼させるのに必要な空気や風が「ヴァータ」。
火を燃やす燃料が食べ物です。
美味しく炊けたご飯=健康 です。
美味しく炊くには、適度な火力と風・空気、それと飯盒の中のお米に対する適量の水が必要ですね。
それぞれのバランスが整うことで、健康が作られるということになります。
ドーシャに作用するのが食べ物で、それぞれ6つの味(ラサ)と6つの性質(グナ)があります。
それぞれの組み合わせによって、個々の体質に合わせたバランスを導き出します。
まず、6つの味「甘味、酸味、塩味、辛味、苦味、渋味」
それと、6つの性質「重性、軽性、油性、乾性、熱性、冷性」
食べものにはそれぞれこの6つの味と6つの性質が作用するのですが、ハチミツだけはこの法則に従わない特異作用(プラバーヴァ)があります。
通常、甘味はカパを増やす(太る)とされていますが、ハチミツだけはカパを減らす作用があるとされます。
YOGAや瞑想をされている方々には「トリ・グナ」をご存知の方も多いことでしょう。
トリ・ドーシャの次に、サプタ・ダートゥの説明が続くのが一般的なのですが、ここでは省きます。
サプタ・ダートゥもアーユルヴェーダの理解を深めるためにはとても重要なのですが、身体(肉体)の構成のトリ・ドーシャに対して、精神(心)の性質=「トリ・グナ」を知る方が、バランス良く健康の意味を理解できると思います。
「トリ・グナ」(3つの性質):精神(心)の性質を表したもので、次の3つを指します。
サットヴァ | 【純粋性】 | 至福の状態 |
ラジャス | 【動性】 【激質】 | 躁の状態 |
タマス | 【惰性】 | 鬱の状態 |
トリ・ドーシャは3つそれぞれ等量のバランスが理想系ですが、トリ・グナはサットヴァの状態が理想になります。トリ・グナとトリドーシャは互いにリンクしています。
ラジャスが優勢になると、ピッタ、ヴァータが高く、タマスが優勢になると、カパが増している状態です。
食べる物によっても変化しますが、YOGA、瞑想などでコントロールすることも。(可能です。)
インドの叙事詩「マハーバーラタ」の一部であるバガヴァットギーター(神の詩)やヨーガ・スートラにも詳しく解説されています。このトリ・グナの性質の見極めはとても重要なため、重複して何度も、また多角的に説いています。
ちなみに、アーユルヴェーダにおいてハチミツは有益な食べものであり、「サットヴァ」(純粋性)なもの。とされています。
「サットヴァ」(純粋性)な食べものって、どのような意味なのだろう・・・・。
はじめはよく理解できませんでしたけど、これまで何度か採蜜ワークショップをおこなってきて、あることに気づきました。
採れたてのハチミツを口に含んだ瞬間、みなさんとてもいい笑顔になるのです。
そして、より五感で味わおうとするのか、必ず無口になります。笑)
味覚・視覚・触覚・嗅覚・・・そして自然の中で鳥のさえずりや木々の風に揺らぐ音をBGMにした聴覚の五感で感じ、幸せのひとときを味わっているようなのです。
そんなみなさんを見ていて、まさに、この瞬間の状態が至福を表す「サットヴァ」(純粋性)なのだと感じます。
サットヴァをここに全て書き表すことができませんし、上記の状態はほんの一面にしか過ぎないと思いますが、YOGAや瞑想で体験できる真から安らいだ状態、至福の状態、雑念がなく精神(心)が満たされた状態と同様の効果や性質をハチミツが持ち合わせていると言えるでしょう。
精神(心)の「サットヴァ」な状態をもたらすと同時に、肉体のドーシャのバランスを整えてくれるのがハチミツなのです。
アーユルヴェーダは、「チャラカ・サンヒター」「スシュルタ・サンヒター」「アシュタンガ・フリダヤ・サンヒター」と、主に3つの原書があり、3大医書(ブリハット・トライー)と呼ばれています。
この原書はサンスクリット語で書かれていて、韻文形式かつ詩情的で比喩も多く、重複して記述されている部分もあります。
現代の化学書や医学書のようにマニュアル化されてないため、関連する部分を慎重に引用していく必要があり、代替医療としてのアーユルヴェーダの治療を求めるのであれば、大学でアーユルヴェーダを専攻した医師によるものとなります。
ちなみにサンスクリット語でハチミツは、Madhu(マドゥ)と呼ばれ、主な記述はチャラカ・サンヒターとスシュルタ・サンヒターにあります。
「蜜群」 スシュルタ・サンヒター総論45章より
蜜は甘く、渋みの後味を残し、乾性、冷性、健胃的、美形的、強壮的、軽くして和、美味、溶解性(Lekhanam)でまた発酵性(Sandha-nam)である。潰瘍および眼に対し、浄化作用ならびに治癒作用があり、強精性、収飲性で、体内すべての極小の通路、毛細管にまで浸透する。 |
ハチミツの分類と種類
ハチミツの分類
ハチミツの経年変化により性質が変わる状態ごとに分類しています。
Jayanand Madhuは、この分類ごとに分けて採蜜・瓶詰めしています。(アーママドウを除く)
Ⅰナヴィン・マドウ | 建設的、強精的で、緩下剤として働き、僅かながらヴァータ・カパの失調を抑える。 |
Ⅱプラーナ・マドゥ | 渋味があり、溶解性で、脂肪および肥満を減少する。 |
Ⅲパクワ・マドウ | トリドーシャの失調を抑える傾向がある。 |
Ⅳアーマ・マドゥ | トリドーシャを激動する傾きを持つ。 |
ハチミツの種類
ミツバチとその他のハチが集めるハチミツごとに種類が分けられています。
チャラカ・サンヒターには4種類のハチミツの記述があります。
1.パウテッカ 2.バラーマラ 3.クシャウドラ 4.マークシカ
スシュルタ・サンヒターには8種類のハチミツの記述があります。
1.パウテッカ 2.バラーマラ 3.クシャウドラ 4.マークシカ 5.チャットラ 6.アーリギャ 7.アウダーラカ 8.ダーラ
パウティッカ | 非常に大きなミツバチによって、有毒な花からも花蜜を集めます。それは、【vata】を増やし、痛風や胸の灼熱感を引き起こします。また、鎮静作用があり、脂肪が減少します。 |
バラーマラ | 大型のミツバチによって集蜜され、蜜は粘性です。 |
クシャウドラ | 中型のミツバチによって集蜜され、軽性、冷性で【kapha】を溶解します。 |
マークシカ | 小型のミツバチによって集蜜され、極めて軽性、乾性です。【vata-kapha】の疾患、【kapha】の疾患に有用です。 |
チャットラ | 重性、冷性です。痛風と白斑【shwitra】に効果があります。 |
アーリギャ | 目によいが、関節炎を引き起こします。 |
アウダーラカ | 皮膚病に有用で、喉(声)の調整に効果があります。 |
ダーラ | 乾性で、嘔吐を抑えます。 |
上記の8種類のハチミツの中で、マークシカが最も効能に優れたハチミツで、マクシカー種のハチが集めたハチミツと記述されています。
この8種類のハチミツのうち、ハチの種類は7種です。
ダーラのみが、ハチの種類の記述がなく樹液などから採取することから甘露蜜を示していると思われます。
ミツバチ以外のハチは蜜を貯めることはほとんどありません。スシュルタ・サンヒターに7種類のハチの記述がありますが、インドには5種類のミツバチ(野生)しか生息していません。そのため、ミツバチ以外のハチ(スズメバチ、ハナバチ、ハリナシバチ、アシナガバチ等)の蜜も採取していたのかもしれません。(極わずかな量と思われます。)
ちなみにチャットラの記述にある特徴的な巣の形は、ミツバチの種では確認されてなく、スズメバチによるものと思われます。
しかし、原文の記述にあるハチの特徴は断片的で、アーユルヴェーダの研究者の論文等も参考にしながら調べていますが、はっきりとは分かりません。
これまで調査した中で、マクシカー種はインドミツバチ(トウヨウミツバチの亜種)の可能性が高いと思われますが、コミツバチである可能性もあります。
クシャウドラはコミツバチ。チャットラはスズメバチ、バラーマラはオオミツバチと思われますが、カリバチの説もあります。
アーリギャはハリナシバチ、アウラーダカはクロコミツバチと思われます。
毒の花からも花蜜を集めると原文に記述のあるパウティッカについては、[大型のハチ]や[ブヨに似た小型の黒いハチ]と相反する論説があります。この毒の花の花蜜が確認されているのがシッキム地方との情報もあり、[大型のハチ]の場合はヒマラヤオオミツバチかもしれません。
マクシカー種はインドミツバチ(トウヨウミツバチ亜種)と思われ、ニホンミツバチ(トウヨウミツバチ亜種)ととても近い種類です。ニホンミツバチはいろいろな花からまんべんなく蜜を集めるのに対して、セイヨウミツバチは最も多く蜜が採れる花から集蜜する性質があります。
セイヨウミツバチはニホンミツバチの数倍も集蜜力も高く、そのためアカシア蜜、レンゲ蜜、クローバー蜜など流蜜の多い花の種類ごとに蜜を採ることができるのです。(単花蜜と呼ばれています)
セイヨウミツバチも補助蜜源を多く用意することで、主力の蜜源の花期以外は多様な花々から蜜を集めます。
アーユルヴェーダではハチミツの効能・効果を古典の記述や、科学的根拠に基づき、次のように伝えています。 (引用:Dr.krishna R.S.)
・ |
ハチミツに含まれる糖分は、消化器系に吸収されやすく、ただちにエネルギー源となります。 |
・ | 吸湿性があるため治癒効果が早く、治癒組織の乾燥を防ぎます。 |
・ |
鎮静剤の効果があり、夜尿症障害に効果があります。 |
・ | 抗酸化作用があるため、皮膚の損傷を復元し、アンチエイジングに効果があります。 |
・ | ハチミツの酸性と酵素により生成された過酸化水素により、抗菌効果があります。 |
・ | ハチミツを常用することで、細菌やウィルス性と戦う白血球を強くします。 |
・ | ハチミツは、目と視力(回復・維持)にとても有効です。 |
・ | ハチミツは、喉の渇きを癒します。 |
・ | カパを抑えます。 |
・ | しゃっくりを治めます。 |
・ | 尿路疾患、駆虫、気管支喘息、咳、下痢と吐き気または嘔吐に効果があります。 |
・ | 新鮮なハチミツは、体重を増加させ、穏やかな下剤となります。 |
・ | 時を経て保存されたハチミツは、カパを抑え脂肪の代謝に効果があります。 |
それと、アーユルベーダではハチミツについてもう一つの特別な性質を説明しています。
ヨーガヴァーヒ 【Yogavahi】 |
他の物の効能を体内の隅々まで運ぶ特殊な機能 「体内の最も深い組織まで浸透する特性があります。ハチミツは、他のハーブ(薬)と併用することで、ハーブ(薬)の薬効を高め、体内の隅々まで行きわたらせます。」 |
アーユルヴェーダの薬局や漢方などでも、ハーブ(薬)とハチミツを一緒に服用を薦めるようで、薬局でもハチミツを販売しているそうです。
ハチミツはアーユルヴェーダで有益な食べものとされていますが、気をつけなければいけないことがあります。チャラカ・サンヒター、スシュルタ・サンヒター、アシュタンガ・フリダヤ・サンヒターの中にも何度も繰り返し記述されているのが、ハチミツの加熱についてです。
そのため、アーユルヴェーダではハチミツは非加熱のものを選び、使用するときも熱を加えることはしません。 具体的な記述は次の通りです。
・ |
ハチミツは、熱い食品と混ぜ合わせてはいけません。 |
・ | ハチミツは、加熱してはいけません。 |
・ | ハチミツは、温度の高い環境で作業している時に食べてはいけません。 |
・ | ハチミツは、雨水、熱い食物、香辛料の効いた食物、ウイスキー、ラム、ブランデーのような発酵飲料や、ギーやマスタードと決して混ぜ合わせてはいけません。 |
・ | ハチミツは、多種類の花の蜜を含みます。そのいくつかには有毒である場合があります。 |
・ | 毒には、「熱」または【ushna】(刺激性)の性質があります。ハチミツが熱くて香辛料の効いた食品と混ぜ合わせると、毒性は増大し、ドーシャのアンバランスを引き起こします。 |
・ | 蜂蜜はいろいろな花の甘露を含みます。そして、その幾つかは有毒である場合があります。毒には、熱いまたはushna性質があります。蜂蜜が辛くて香辛料のきいた食品を混ぜ合わせられるとき、有毒な特性は強化されて、ドーシャのアンバランスを引き起こします。 |
以上のように、アーユルヴェーダには、「ハチミツは加熱してはいけない。または身体が熱を帯びている状態で食してはいけない。」とされ、古典には加熱されたハチミツを摂ることで重篤な健康被害や死に至るといった記述もあります。
しかし、その一方ユナニ医学(エジプトの伝統医学)では、ボイルしたハチミツを使っています。
また、古くからパンを作る際の酵母をハチミツから作り、パンの生地にもハチミツを練りこんだりと、インド以外ではハチミツの加熱は一般的にありますが、これらを原因とする健康被害は報告されていないそうです。
ちなみに、アーユルヴェーダの研究機関においても、現在はハチミツを加熱することで古典に記述のあるような「死を招く」ような深刻な健康被害が確認されていないそうです。
アーユルヴェーダの8種類のハチミツの記述の中に有毒とあるものが、パウティッカ種のハチミツです。もしかすると、古くはパウティッカ種のハチミツやその他のハチミツが混合されて流通していたのかもしれません。
また、パウティッカ種のハチが集蜜する毒花は、限定された地域のもので、現在既に無いのか、その地域では養蜂をおこなっていない可能性も考えられるでしょう。
だからといって、アーユルヴェーダが誤りとは言い切れません。アーユルヴェーダにおいてハチミツを加熱してはいけない理由に有毒な花蜜と蜂毒があげられています。
日本にもトリカブトやツツジ科の花蜜に毒が含まれますし、それらの花から得られたハチミツによる健康被害の報告もあります。
トリカブトの毒は加熱することで無毒になるそうですが、世界中の有毒の花が持つ毒の種類は数百とあり、加熱することでさらに毒性が増す有毒な花蜜があるかもしれません。
また、蜂毒も研究されているのは主に西洋ミツバチのもので、アーユルヴェーダにある7種のハチ毒についてはまだまだ研究段階のようです。それらについても今後の研究で新しい発見があるかもしれません。
最近は、ハチミツを加熱することでAGEs(糖化最終化合物)が生成され、このAGEsが糖尿病性血管合併症、動脈硬化を発症しやすくなることが分かっています。
非加熱のままなら造血や血管強化の作用があるのに、わざわざ加熱して健康リスクを高めるAGEsを増やすのもナンセンスのように思います。
ハチミツを生のままなら、熱に弱いビタミンCや酵素が有効に働きますが加熱してしまうと失ってしまいます。ビタミンCや酵素は「ハチミツ成分とエビデンス」にあるように、わたしたちの健康にとってさまざまな役割を与えてくれます。
ハチミツは人工的には作れない自然からの恵みです。
スプーン一杯の中に凝縮された成分を余すことなく受けとるには、やはり、加熱しないでいただく方が好ましいといえるでしょう。
ハチミツに含まれるビタミンやミネラルをはじめ、いろいろな成分がわたしたちの身体を元気にしてくれます。
成長時に必要な必須成分から老化防止のビタミン・ミネラル・ポリフェノール・・・。
傷やヤケドにも、抗菌・殺菌に必要な酵素や有機酸、ポリフェノールが有効で、ビタミンなどが皮膚の再生を促してくれます。
ハチミツに含まれるビタミンの92%が活性型ビタミンです。つまり、サプリメント等のように不活性型のビタミンは含有量を多くしないと効果が得られないのと比べ、活性型は少量で効果が得られます。また、ほうれん草などは収穫後からどんどんビタミンCが減っていきますが、ハチミツに含まれるビタミンは安定していますので、保存していてもその効果は変わらないそうです。
このように、20世紀になってから科学的な根拠が解明されてきたハチミツですが、古来からその多様な効能に着目していくつもの治療法がありました。
その代表的な治療法を紹介します。
【注意】治療は、医師による治療や薬剤師による処方が優先されます。決して、この治療法を勧めているわけではありません。
視力 | にんじんジュースにティースプーン2杯のハチミツを混ぜたものを毎日摂ることで、視力の改善に効果があります。長時間パソコンを使用する人に有効です。 |
風邪・咳 | 風邪の咳・呼吸が苦しい時には、ティースプーン2杯のハチミツと同量のジンジャージュースを混ぜたものを服用します。 |
喘息 | ハチミツとジンジャージュースを合わせたものに、同量の黒胡椒(粉)を加えたものを1日3回服用することで喘息が緩和します。 |
血圧 | ティースプーン2杯のハチミツとティースプーン1杯のにんにくジュースを合わせたものの常用は、血圧を正常にする効果があります。 |
ダイエット | 朝一番の空腹の状態で、温めのお湯にティースプーン2杯のハチミツとティースプーン1杯のレモンジュースを加えたものを飲むことで、血液を浄化し脂肪を減少させることができます。 |
安眠 | 寝る前に温めのお湯にティースプーン2杯のハチミツを服用します。 |
夜尿症 | 温めのお湯にティースプーン2杯のハチミツを服用します。 |
吐き気 咳・風邪 |
トゥルシー(バジル)の葉のジュースにティースプーン2杯のハチミツを服用します。 |
胃・骨の癌 | 一杯シナモンパウダーと1杯のハチミツを1日3回服用します。 |
ヒトとハチミツの歴史は古く、アーユルヴェーダをはじめとして世界各国に薬や治療法として使われていた記述がたくさんあります。
実際にハチミツに含まれる成分とエビデンスを調べてみると、健康食品としての効果の高さが分かります。
カロリー | 294kcal/100g →砂糖は384kcal/100g |
PH | 3.2~4.9 酸性ですが、体内に吸収された後は有機酸とミネラルによりアルカリ性として働くためアルカリ性食品です。血液サラサラ効果。 |
糖 質 75~82% (炭水化物) | |
果糖 |
35~49% エネルギー源 疲労回復 二日酔い等に。 インシュリンに依存しないため糖尿病状態のエネルギー補給にも。その他、薬物・アルコール中毒にも用いる。利尿作用もあり。 |
ブドウ糖 |
31~36% エネルギー源 疲労回復 利尿作用。 栄養障害や低血糖時に対する糖質補給に。 |
麦芽糖 | 5~8% エネルギー源 インシュリン非依存的で血糖値の上昇を示さず。 |
ショ糖 | 1~4% エネルギー源 砂糖と同じ。 |
オリゴ糖 | 1~3% 善玉菌であるビフィズス菌の増殖に。 |
アミノ酸 | 1%程度 ロイシン アラニン メチオニン ヒスチジン等 20種類以上:抗酸化物質 |
有機酸 0.5~3% | |
酢酸 | 殺菌 防腐 酸性→アルカリ性へ変化 |
塩酸 | 殺菌 防腐 |
クエン酸 | エネルギー生産に必要なクエン酸回路を構成する物質のひとつ 抗酸化物質 |
グルコン酸 | 善玉腸内細菌の増殖能 便秘・下痢の予防 酸性→アルカリ性へ変化 抗酸化物質 |
乳酸 | グルコース合成の基質 骨粗鬆症の予防 |
リンゴ酸 | クエン酸回路を構成する物質のひとつ 酸性→アルカリ性へ変化 |
リン酸 | エネルギー代謝や核酸やリン脂質分子などの構造の一部を担います。 |
コハク酸 | 旨味成分のひとつ 酸性→アルカリ性へ変化 |
蟻酸 | 酸性→アルカリ性へ変化 |
その他、ピログルタミン酸など |
酵 素 | |
グルコースオキシターゼ | グルコースを分解して過酸化水素をつくる。 強い殺菌力で呼吸器系の病原体の増殖を抑える。抗酸化物質 美肌効果 |
スクロースインベルターゼ | 花蜜や甘露のショ糖を分解して果糖・ブドウ糖にする転化酵素 |
アミラーゼ | デンプンやグリコーゲンを加水分解してグルコースを生成する |
カタラーゼ | 抗酸化物質 |
他、80種以上 |
ビタミン | |
C アスコルビン酸 |
造血、抵抗力補強 うつ・不安・ストレス防止 動脈硬化や血栓予防など老化防止 抗酸化物質 |
コリン | 発育促進 強肝作用 鎮痛 脂肪代謝 |
B3ニコチン酸(ナイアシン) | 皮膚の健康 造血 消化促進 |
B6 | 皮膚の健康維持 うつ・不安・ストレス防止 葉酸と協働して心臓病のリスクを低減 |
B5 パントテン酸 |
成長促進 老化防止 中性脂肪低下 うつ・不安・ストレス防止 疲労予防 発毛促進・抜け毛予防 |
B2 | 発育促進 肝臓機能強化 皮膚・粘膜の正常化 発毛促進・抜け毛予防 |
K | 止血 解毒 利尿 骨形成 |
B1 | 炭水化物の代謝 うつ・不安・ストレスに効果、神経系・筋肉系・心臓の機能を正常化 |
B9 葉酸 |
ヘモグロビン形成(造血) 貧血予防 うつ・不安・ストレス防止 成長促進 骨粗鬆症 |
ビオチン |
発育促進(特に中年以上) 発毛促進・抜け毛予防 皮膚の健康 |
A |
器官・臓器の成長・分化に関与 視機能正常化 |
ビタミン | |
C アスコルビン酸 |
造血、抵抗力補強 うつ・不安・ストレス防止 動脈硬化や血栓予防など老化防止 抗酸化物質 |
コリン | 発育促進 強肝作用 鎮痛 脂肪代謝 |
B3ニコチン酸(ナイアシン) | 皮膚の健康 造血 消化促進 |
B6 | 皮膚の健康維持 うつ・不安・ストレス防止 葉酸と協働して心臓病のリスクを低減 |
B5 パントテン酸 |
成長促進 老化防止 中性脂肪低下 うつ・不安・ストレス防止 疲労予防 発毛促進・抜け毛予防 |
B2 | 発育促進 肝臓機能強化 皮膚・粘膜の正常化 発毛促進・抜け毛予防 |
K | 止血 解毒 利尿 骨形成 |
B1 | 炭水化物の代謝 うつ・不安・ストレスに効果、神経系・筋肉系・心臓の機能を正常化 |
B9 葉酸 |
ヘモグロビン形成(造血) 貧血予防 うつ・不安・ストレス防止 成長促進 骨粗鬆症 |
ビオチン |
発育促進(特に中年以上) 発毛促進・抜け毛予防 皮膚の健康 |
A |
器官・臓器の成長・分化に関与 視機能正常化 |
ミネラル | |
カリウム | 心臓・血管、筋肉機能の調節 体内の水分バランスの調整 高血圧の予防 疲労予防 老廃物の除去 |
ナトリウム | 心臓 筋肉機能の調節 |
硫黄 | 髪毛・爪の発育 有害物質の排出 必須アミノ酸の成分 |
塩素 | 胃液中の塩酸分泌に不可欠 肝機能の維持 |
カルシウム | 骨と歯を造る 活力と長寿に関係 |
リン | 骨と歯を造る 成長と修復を補助 細胞の増殖 |
珪酸 | 皮膚に弾力を持たせる |
マグネシウム | 神経興奮の抑制 炭水化物の代謝 美肌効果 |
ケイ素 | 皮膚に弾力を持たせる 骨の強化 |
鉄 | ヘモグロビン形成 貧血予防 |
マンガン | 生殖と成長の正常化 疲労回復 |
銅 | ヘモグロビン形成時に鉄と協力 貧血予防 白血球系の造血作用 骨・結合組織の代謝 |
亜鉛 | 体内酵素の働き 皮膚・粘膜・脳と骨の発育および維持 味覚嗅覚の保全 生殖器官の発達に関与 胃炎、胃十二指腸潰瘍の改善 美肌効果 |
クロム | 糖代謝 コレステロール代謝 |
ヨウ素 | 甲状腺ホルモンの必須材料 各種細菌・ウィルスに対する殺菌作用 |
そのほかの成分2~3% | |
アセチルコリン及び類似物質 | 神経伝達作用 副交感神経を優位にし、リラックスする 発育促進 うつ・不安・ストレスを解放 肝臓への脂肪沈着抑制 血圧 血中コレステロールを下げる 胃炎・胃十二指腸潰瘍の改善 老化防止 |
類パロチン | ローヤルゼリー由来物質 ミツバチ唾液線ホルモンで若返り効果 |
ポリフェノール:抗酸化物質 血管強化作用 | |
フラボノイド |
ケルセチン アカセチン ガランギン ケンフェノール ピノセンブリン クリシン 等 抗菌・殺菌 抗酸化物質 血管の拡張 抗血栓 抗虚血作用 抗がん作用 美肌効果 アンチエイジング |
カフェイン酸フェネチルエステル | 抗酸化物質 |
一酸化窒素 | 強力な活性酸素(フリーラジカル)を発生させ、病原体の増殖を防ぐ |
芳香性物質 | 花粉由来 |